血煙お花畑

 叫んだ大次郎、愛する千浪の危急を知って、いっさんにその三角形の山頂を駈け下り出した。ぼんやり呆気に取られて後見送っている宗七を残して――三里の下りを阿弥陀沢の藤屋へ。 言いだしたらきかぬ江上佐助の気性、これはただごとでは納まるまいと、大次、走りながら、腰の女髪兼安の柄を叩いて、ぶつり、鯉口を切っ...

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この下の猿の湯にて

「どうしてこんなところにつづら笠が――。」 つぶやきながら、宗七が手をかけて笠を除《と》ると、下には、小石を重しに載せて一枚の紙が置いてある。 宗七が拾い上げて、大次郎に渡した。「はてな。何人が残しておいたものか。ことによると、佐助ではないかな――。」 ふたつ折りの紙をひらくと、さらさらと矢...

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七年ぶりに会った懐しい友

 宗七は、とろんとした眼を上げる。「あは、あははは、いや、こっちのことじゃ。」大次郎は、自嘲的に笑って、「それでどうして、誓約どおり今日ここへ来る気になられた。」「それがどうも、あっしにもよくわからねえんで、へえ――来ねえつもりだったんですが、なにかにこう引っ張られるような気もちで、気がついた時...

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