入道雲

 しずかな声で、大次郎が言った。 と、瞬間に、正面の北伝八郎を襲うと見せた大次郎、だっ! 横ざまに足を開いて、右手にいた一人へ片手なぐり――女髪兼安は、がっと聞える異妖なよろこびの叫びを揚げて、肉を咬《か》み、骨を削った。 たら、たらと、女髪を伝わって鍔もとを舐める温かい人血。「ふふん、こりゃ...

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七、八人の出羽守の一行

 北伝八郎がおめいて、すらり長刀を引きぬきざま、主計と大次郎のあいだへ割り込んで来た。「小僧っ! 来るかっ!」 両手の指を失った川島与七郎は、一人が扶《たす》けて、七、八人の出羽守の一行である。 出羽は、すこし離れたところに立って、相変らず白の弥四郎頭巾の中から、おそらくは面白そうに、伴大次郎...

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血煙お花畑

 叫んだ大次郎、愛する千浪の危急を知って、いっさんにその三角形の山頂を駈け下り出した。ぼんやり呆気に取られて後見送っている宗七を残して――三里の下りを阿弥陀沢の藤屋へ。 言いだしたらきかぬ江上佐助の気性、これはただごとでは納まるまいと、大次、走りながら、腰の女髪兼安の柄を叩いて、ぶつり、鯉口を切っ...

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