出羽は、動かない

 大次郎も、かなり斬りつけられているに相違ない。着物はところどころ裂かれて、若布のように下がり、どす黒い血を全身に浴びて、顔ももはや人相がわからないほど血まみれなのだ。 血で、女髪兼安の柄が滑るのか、時どき片手ずつ離してはじぶんの脇腹へ股へ、赤い掌をこすり拭いている。 出羽は、動かない。 両手...

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入道雲

 しずかな声で、大次郎が言った。 と、瞬間に、正面の北伝八郎を襲うと見せた大次郎、だっ! 横ざまに足を開いて、右手にいた一人へ片手なぐり――女髪兼安は、がっと聞える異妖なよろこびの叫びを揚げて、肉を咬《か》み、骨を削った。 たら、たらと、女髪を伝わって鍔もとを舐める温かい人血。「ふふん、こりゃ...

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七、八人の出羽守の一行

 北伝八郎がおめいて、すらり長刀を引きぬきざま、主計と大次郎のあいだへ割り込んで来た。「小僧っ! 来るかっ!」 両手の指を失った川島与七郎は、一人が扶《たす》けて、七、八人の出羽守の一行である。 出羽は、すこし離れたところに立って、相変らず白の弥四郎頭巾の中から、おそらくは面白そうに、伴大次郎...

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