草の文

     草の文

「さようでげすな。」 宗七は軽薄な表情で、わざとらしくそこらを見まわしながら、「あの江上の先生が、今日という日をすっぽかすわきゃあござんせんが。はてな――。」 けれど、いくら眺めわたしても、狭い山上は一眼である。人といっては、大次郎と宗七の二人きりで、思い出したように雨に濡...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 07:29 am  

七年間の遊蕩《ゆうとう》

 たしかに利七には相違ないが、語調といい、顔つきといい、七年間の遊蕩《ゆうとう》に崩れきったらしい安芸人肌――きっとした大次郎の視線を受けても、利七は平気の平左で、がさがさと笹を鳴らして上って来ると、自分から先に中央の三角石の前へ行って、ばらり、裾を下ろして蹲踞《しゃが》みこんだ。葛籠笠をぽんと、傍...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 06:50 pm  

唄声は、ぴたりと止んだ

 もう一度呼ばわると、唄声は、ぴたりと止んだ。「有森ではないか。利七ではないか――伴だ! 大次だ。待っておったぞ。」 神社の横手から熊笹の中を、だんだら下りの小径《こみち》が、はるか甲斐の国のほうへ落ちている。その降り口まで走り寄って大次郎が下を望むと、「へっ! こりゃあ伴の若旦那で――どうも...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 06:49 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0207 sec.

http://ath-kita.jp/